クワジェリン基地

以前、マーシャル諸島のマジュロというところに出かけたことがある。

グアムからホノルルまで、もちろん直行便もあるのだが、途中、チューク(トラック)、ポンペイ(ポナペ)、コスラエ(クサイエ)、クワジェリン(クエゼリン)、マジュロ、と各駅停車のように立ち寄りながら飛ぶ「Island Hopper」と呼ばれている便があり、とっても風情があって良い感じなのだ。(機材は737)

マジュロでの出来事も色々あったのだが、強烈な思い出になってしまったのが、帰路のクワジェリン。帰りはもちろんホノルルからの便を待ち、グアムに向かうのだが、その日は(その日も)飛行機の到着は遅れ気味。待合室で隣にいた老人と「まだですかねぇ」みたいな会話をしながら、かれこれ2時間ほどの遅れで出発。

ちょっと待ちくたびれたのもあったのか、乗っていきなり居眠りをしてしまった。「ハッ」と気づくと、機はクワジェリンに到着しており、アナウンスが何か言っていたようだが意識が戻ったときには皆ぞろぞろと降機を始めたところ。

ここで強烈な疑問が。「皆ぞろぞろ???」

クワジェリンというのは米軍のミサイル基地がある島で、観光客含め一般人は降機することができない。往路、マジュロに行く便でもクワジェリンに駐機中に兵士がドカドカ乗り込んできて、乗客が怪しい荷物を持ちこんでいないかチェックがあったくらいだ。ただ、米軍も多少は配慮しているのか、ドカドカ乗り込んできたのは可愛い女性兵士ばかりだったが。
「ハイ、チェックします~」「どんどんチェックしてやってちょうだい~」というノリ。

そんな経緯もあったので、聞き逃したアナウンスで「何かの事情でいったん全員降りることになった」と言っていたのであろうと、冷静に分析。見回すと、待合室で会話していたご老人もスタスタ降りてるので、もはや疑いの余地なしと思い、皆について行った。

そして基地の入口へ。ちょっとドキドキしながら中に入ると、いきなり女性兵士たちのお出迎え。「ようこそいらっしゃいませぇ~」「お荷物はどうぞこちらへ~」と、下にも置かぬ歓迎ぶり。「えっ」と驚きながら先に進むと、「みなさんちょっとココでお待ちを。ガイダンスを始めます~」とのこと。

聞くと、「基地内一周自転車ツアー」か「ポリネシアン・ダンスショウ」のどちらかを選択できるとのこと。基地内一周なんて滅多にない機会なので、もちろん自転車ツアーのほうに申し込み。「ツアーを申し込んだ人には臨時の許可証を発行しますので、写真撮りま~す。書類に記入したらこちらにお並びを~」と案内があった。

ここでちょっと不安が。

ツアーに申し込んだ人たちとダンスショウを申し込んだ人たちは合計しても20人くらい。さっきはもっとたくさん降りたような気がしたが。全員降りていれば100人以上はいるはず。残りの人たちはいずこへ??そして、そもそもこんなことをしていて飛行機の出発時刻に間に合うのか???さっきの老人はと目で探すと、行きかう人たちが皆深々と敬礼し、老人は鷹揚に答礼している。「あれ??ひょっとしてエラい人だったのか?」

とにかく不安を抱えたまま書類を記入して撮影窓口へ。階級(order)なんかも書く欄があったがもちろん無視。ところがここで受付の美女の顔がちょっと曇った。
「あなた、階級は?」
「階級て。そんなもんあれへんで。トラベラーやがな」と堂々と回答。
「何??とらべら~~???飛行機に乗らないの??」・・そんな大声出さなくても。
「もちろん、乗るよ!」
・・・受付の女性が慌ててどこかに電話するとたちまち現れたのが屈強な黒人男性兵士2名。2人に両側をはさまれ、ほとんど連行されるように基地の外へ。「そう!カバン!カバンを置いたまま!」と言うと、「自分で取りに行け」とアゴで示されてしまった。また、基地の横に、いかにも従業員専用というようなエリアがあり、さっきの「残りの人たち」はそこにいた!そうか、基地職員だったのか!

連行される途中で恐る恐る話を聞いてみると、今日は退役軍人の来訪がたくさん予定されていて、その歓迎会だったらしい。

そして飛行機に戻ってみると、私が座っていたあたりから前は誰もいないのに、後ろは全員着席している。当然、視線も厳しい。
そういえば座席の予約をするときに何故か最前方のほうが全く取れなかったのだが、そうか、軍関係者で埋まっていたのか。。。そんな状況で予約できる一番前の席を取ってしまったのがそもそもの間違いの元だったのか。

しかし、アメリカの退役軍人かどうかくらい、見た目でわかりそうなものだと思うのだが、ハワイは日系人の軍人も多いし、見ただけでは判別できないのかな。。。

とにかく、(たぶん大幅に待たせてしまった)後ろの人たちの視線が怖くて、眠くもないのにグアムまでずっと寝たふりをしていた私でした。。ああ、恥ずかしい。。