レヴィ・ストロース『神話論理』の森へ

(私には)難解だった「神話論理」に、ガイドブックとしての本書があることを知り、さっそく読んでみた。

7人くらいの「有識者」の人たちが、それぞれの立場で、レヴィ・ストロースについて色々と語っている。

しかし、ガイドブックとして、「ほほぅ、そういうことだったのか」という思いで読めたのは、中沢新一による解説だけであった。この解説は非常に明晰で、神話論理の中でハードルが高いなと感じられていた様々な定式化が、この解説で一気にわかりやすくなる。そうか、群論の考え方だったのか、など。

ところが、他の人たちの解説?は、神話論理と正面から向き合ったものは1つもない。せいぜい「感想文」といえる程度のものばかりで、大半は、レヴィストロースではなく、自分のフィールドでいろんな話を語っているだけ。それらを読んだからといって「神話論理」が読みやすくなるわけでは全くない。

渡辺公三(多分、大物?)によるレヴィストロースへのインタビュー記事もあるが、読んでいてちょっと痛々しくなるような記述。頑迷で自説を曲げない「痛い」学生が、必死で先生に食い下がっては「それは違うよ」と何度もあしらわれているような感じ。

あの池澤夏樹も解説を寄せているというので期待して読んだのだが、彼に至っては、実は神話論理をほとんど読まずに書いたのではないかと思ってしまうほど。「結局はデカルトを受け入れるかどうかだ」というのは、あまりにも飛躍しすぎではなかろうか。「一を聞いて十を知る」というと格好いいが、「一しか聞いてないのに、十も二十も語っているのではないか」という疑いが濃厚。

とにかく、『神話論理』に真面目に取り組もうと思っているのであれば、中沢新一の記事以外は読んでもムダ。「レヴィストロース」の熱心なファンで、「レヴィストロースに関することなら何でも知りたい」という人にとっては
満足度7割くらいというのが、本書を読んでの感想。