本と煙草と音楽と

タイトルから受けるイメージは、「レコードやCDを聞きながら紫煙をくゆらせ、少し黄ばんだ古書のページをめくる」という、なんともノスタルジックな感じなもののような気がするが、たぶんそれは僕が昭和生まれで、そういう実体験を持っている世代だからなのだと思う。

しかし2020年末の現在、そんなアナログなイメージを持つ人たちはずいぶん減って来てるのではなかろうか。

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電子タバコの普及は著しいものがある。日本全国の統計だと5割弱ということのようだが、東京などの都市部に限れば(体感的だが)半数以上は電子タバコに切り替えているのではないかと思う。席に着くとおしぼりと灰皿が出て来るのが当たり前だったルノアールが、いまや紙巻たばこ禁止だ。

紙巻たばこに比べると電子タバコは「刺激が弱い、喫ってる気がしない」という声があるのも承知しているが、慣れればあまり気にならなくなるもので、むしろ部屋がタバコ臭くなるとか、本や家具がニコチンで汚れるという煙害やたばこ火事が激減したというメリットのほうが大きいとは思う。

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電子書籍・・・kindleをはじめ、アプリやブラウザで本やコミックを読むのが当たり前になってきた。あと、「電子書籍」とは言わないようだが、国会図書館のデジタルアーカイブのように、古地図や古書籍も手軽に検索して画面で見られるようになってきた。

デジタル化することで「場所を取らない」「劣化しない」という大きなメリットがある上、たいていの場合「検索ができる」という利便性も兼ね備えている。

音楽や映画もだいぶ以前から「レコード盤(CD」から「ストリーミング・ダウンロード」という形態に変わってきた。これも書籍と同じく「場所を取らない」「劣化しない」というメリットが大きい。

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しかし。
これが肝心なことなのだが、「もらい煙草」とか「本やCDの貸し借り」という、昔はごく当たり前だった光景が、どんどん難しくなっていると思うのだ。

これは言い換えれば、「ちょっとしたコミュニケーションの機会」が削られているということにほかならないだろうか。タバコを吸うのも一人でどうぞ、本や音楽もダウンロードしたものを他人に送ったりするのは法律違反。

音楽や動画についてはyoutubeという便利なものがあって、誰かに紹介したい曲などがyoutubeにあればURLを送るという手段も無いわけではないが、もちろんyoutube上にあるものに限られる。そして本の場合は誰かに紹介したくても「あなたも買って読んでね」という大原則になるので、ハードルがとても高くなる。

おまけにこのコロナ騒ぎでテレワークが普及してきている。「テレワーク=孤独」と決めつけるのは短絡的とは思うが、独身の男女とかは出会いの機会がかなり減ってしまったのではないのだろうか?

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20年後、「最後の昭和生まれ世代」が現役を退く頃には、「おひとり様が当たり前」という世代が世の中を動かしているのだろうか。

その頃にはもしかすると「喫煙者」自体が稀有な存在になり、「もらい煙草」なんていうのは落語のネタくらいにしかならないのかもしれない。また、「本の貸し借り」はできなくても、youtube的な図書館みたいなものが普及して、意外とコミュニケーションには問題が起きていないのかもしれない。

でも、なんとなく「一人で生きていくことに慣れ過ぎて、周りに気を配ることができない人たち」が激増する恐れもあるのではないかと少し心配ではあるのだ。。。