長恨歌

ご存じ、白居易(白楽天)の有名な漢詩。

昔、学生だった頃、知人が、そのまた知人の中国のかたに岩波新書の長恨歌を読んでもらって録音した、という経緯のカセットテープを持っていた。読んだのは決してプロの声優ではなく、ごくごく一般の中国の人だったのだが、妙に響きが美しいので時々聴いては悦に入っていた。

もう長いこと忘れていてテープもなくしてしまったが、ふとしたことでyoutubeに長恨歌の朗読がいくつかUPされているのを知り、ちょっと聴いてみた。粵語(広東語)版だと、全く聞き覚えの無い詩になっていたが、國語唱のほうはなんとなく記憶が蘇ってくるようだった。

長恨歌というのは解説をするまでもないと思うが、唐の玄宗皇帝と楊貴妃の愛の歌で、クライマックスは、天界に召された楊貴妃が現世の玄宗を訪ねてくるという最後の数行。

七月七日長生殿、夜半無人私語時
 (七月七日、長生殿で誰もいない夜に語り合った)
在天願作比翼鳥、在地願爲連理枝
 (天にあっては比翼の鳥となり、地にあっては連理の枝とならんことを)
天長地久有時盡、此恨綿綿無絕期
 (天地は悠久といえどいつかは尽きる。しかしこの悲しみは綿々と絶えることはない)

・・・思わず涙を誘うシーンのはずなのだが、聴いてると、何か違う。なんだか明るい民謡を歌っているようにしか聞こえないのだ。多分語り手はそれなりに訓練を積んだ人で、「美しく謳う」ことに長けた人だと思うのだが、どうも技術に酔ってる感じがしないでもない。

ぼくの脳内で色々変換されて美化されている可能性は高いのだが、テープに残っていた、やや朴訥とした朗読のほうが心に迫るものがあったような気がする。こうなれば、知合いの中国のかたに頼んで一部だけでもお願いしてみようか。。。